『空飛び猫 』 アーシュラ・K・ル=グウィン

「…猫に鳥みたいな羽がはえてるのよ」
と、友人が絶賛していました。
100万回生きる猫もいる、長靴はいた猫もいる、緑のベレー帽をかぶってトランペットふいてるのもいたでしょう。羽の生えた猫がいたって驚くことはないのです。
とは、言ったものの、
「貸してあげる」と手渡された本の表紙を見て、「わあ、羽があるよー」と叫んでいました。
羽のついた四匹の猫が木の枝に止まって、こちらを見ている表紙は、結構シュールで、気をひきます。
この猫たちの母猫(普通の猫です)だって、「どうしてこんなことになったかさっぱりわからない」と言ってます。
でも、さっさと最初の驚きから立ち直り、当たり前のお母さんが当たり前にすることをしたんです。
つまり、飲ませ、食べさせ、ひたすらなめてやって、…当たり前の猫に必要なことをしっかり教えて、あとは、子どもらが飛ぶ練習をしようが何をしようが、放っておいたのです。
そして、手放す頃合を見て、寂しさを胸にしまって、誇りを持って、子どもたちを世界に送り出してやる。なんてかっこいいお母さん。

シリーズで、何冊か出ているそうです。
そして、巻を追う毎に子猫たちが成長していくのだそうです。
この本では生まれて育って、母親のもとを巣立った“空飛び猫”たちが不器用に、生きる道を探し、やがて、二人の人間の子どもに出会うまでのお話。

おずおずと世界にあしを踏み出す子猫たちの不器用さが、いいです。
自由は素敵なもの。猫の性質を全部兼ね備えて、さらに飛べるんですもの、世の中はなんて素晴らしい。
しかし、こういう素敵な変り種は目立つんですね。出る釘は打たれるというか…痛い目にあったりします。 ショックを受けて、人生に弱腰になったり…(人間の世界も同じ。)
そして、人間の子どもとの出会い。
お互いにゆっくりと近付いていくのがいいです。読んでいてドキドキします。
「優しい手」に出会えてごろごろと喉を鳴らす猫。私の膝の上に猫が乗ってきたようでほのぼのとうれしくなります。

この本を貸してくれた人が言っていました。「空飛び猫が実在するような気がする。」 この本を読んだら、本当にそんな気がしてきました。