『西の魔女が死んだ 』 梨木香歩

西の魔女が死んだ。ママのママであるおばあちゃんが倒れてしまった。まいは、ママと一緒に、おばあちゃんの家へ向かう車の中で、おばあちゃんとともに暮らした二年前の一ヶ月間を思い出す。


箒に乗って空を飛んだり、呪文を唱えて姿を替えたりという魔女ではない。
この本の中で、おばあちゃんが言う魔法とは、すごく簡単に言ってしまえば、“人生をよりよく生きるための(=よりよく死ぬための)姿勢”のように感じました。
基礎トレーニングが「早寝早起き、規則正しい生活」だったりしてね。

>「悪魔を防ぐためにも、魔女になるためにも、一番大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやりとげる力。」
感性豊かな(一面傷つきやすい)少女まい。
内面的に充実した祖母と、外へ外へと向かう母と、両方の力が、まいを歩き出させるためには必要だったのだと思います。
(祖母・母・娘、三世代のお話、梨木香歩さんの本には多いような気がするのですが・・・ここでも、娘へ、脈みゃくと受け継がれるものを感じます…確執も含めて)

最後の「ダッシュツセイコウ」には、涙。さらに、「アイ ノウ」には、もう・・・ 孫の言葉にならないすべてを受け入れて、自分のすべてをそのまま手渡した潔さでしょうか。そして魂と魂が和解を認め合えた静かな安心。
そういう爽やかさでしょうか。

まるで翻訳物を読んでいるようなバタ臭さが好きです。
「言葉」にこだわった凝った文体だと思います。

おばあちゃんの家の環境も、それから暮らし方も、すごく魅力的です。
深呼吸したくなるような森や庭、小さな畑、ハーブの茂み、木漏れ日の小道。
清潔で、いい匂いがして、そのひとつひとつに意味がある英国風田舎暮らし(魔女の暮らし?)
ラべンダーの茂みの上に広げて干したシーツの上で、わたしも眠ってみたいです。


同時収録「渡りの一日」
その後のまいの暮らしの一こまが描かれている。
「魔女修行、すすんでますね」と声をかけたくなる小さなお話。