『ミス・ビアンカ シリーズ7 さいごの冒険』  マージェリー・シャープ

「ミス・ビアンカ シリーズ」最終巻です。
結局月へは行かなかった、南極へもオリエントへも、どこへも。
大使館の外へ出ることさえありませんでした。そう、事件は大使館の中で起こったのです。
明日大使のめいの結婚式が行われるという夜、大使館は大わらわでした。
まさにその夜、花嫁の妹、6歳のスーザンがいなくなってしまったのです。
明日の結婚式までに妹がみつからないなら、結婚しないと嘆く花嫁。
厳重な警戒の中、外へ出られるはずのない大きな館。
ミス・ビアンカは気がつきます。スーザンの部屋にある古い人形が消えたことに。
スーザンとともに消えてしまった古い人形の「呪い」って、何?
ミス・ビアンカはバーナードとともに、わずかな手がかりを頼りに、スーザンのあとを追います。

おもしろく読めました。
ミステリーっぽくて、ハラハラしました。決して諦めない二匹のねずみたち、いつにも増してスピード感がありました。
台所での人形との会話、ドキドキします。まさか、スーザンは目の前のそこにいるのではないだろうかと思って。

ラストは、ちょっと肩透かしを食わされたような感じ。これって、もしかして、無駄骨だった、とか?
この冒険の意味は・・・そう、どんな場合にも、無心に相手のことを考え、決して諦めないミス・ビアンカの気高さ、かな・・・そして。そうね、終わり好ければすべて好し。ですね。

一巻の「くらやみ城の冒険」がとてもおもしろかったのですが、それ以降、巻を追うごとに、正直、おもしろさが減ってきました。
一巻の面白さが忘れられず、「次はあのワクワクが戻ってくるぞ」と期待しながら、次々と読みすすめてきました。7巻でちょっと盛り返した感じです。
それでも、このシリーズは、わたしにとって、やっぱりとても魅力的なシリーズでした。
ミス・ビアンカという主人公の魅力。美しく教養があり、地位もあり、いろいろな特権を持ち・・、そして、いかなるときにも優雅にふるまう。このままだと鼻につきそうな完璧さを持ちながら、くすっと笑わせるおかしさとかわいらしさがそこにある。
こんな主人公は、たぶん、これからの児童書の中には決して現れないのではないかとさえ思います。
そして、ガース・ウィリアムズ(4巻以降はエリック・ブレグバードですが、礎はやはり、ガース・ウィリアムズでしょう)の挿絵の素晴らしさ。物語を読むことを中断して、じっと見入ってしまう、ねずみたちの表情の豊かさ。そして、ミニチュアの部屋のリアルさ。本の楽しみを倍増させてくれました。
この本を最後にミス・ビアンカとお別れするのは、とてもさびしいです。