『ゆびぬきの夏 』 エリザベス・エンライト

ガーネットはウィスコンシン州の大きな農園の娘。もうすぐ10歳になる。パパママ、11歳の兄、6歳の弟といっしょに住んでいる。
日照りで干上がった川べりで、銀のゆびぬきを拾った日から、彼女の毎日はすばらしいことの連続になる。

子どもの本って、夏の話、多いなあと思います。どこの国の子どもにとっても夏休みって特別のものなのですね。

ガーネットの身の回りでいいことが連続しておこったのは、
「これには魔法の力があるのよ。これには、素敵な力があるの。これをもっているといいことがおこる」
と、彼女が信じていたからでしょう。
良いことと同時に悪いこともあったはずだしね。

ガーネットのまわりの人々のおおらかさも好きだ。
森から現れた少年エリックが初めて母さんの前に立った時
「よくきてくれたわね。お入り。朝ごはんはホットケーキよ」
3人の子を産んで育てたかあさんは、ちょっとやそっとのことではびっくりしません。
エバーハート夫人が語る思い出話、「サンゴの腕輪」とても印象に残っています。全然状況は違っていても、子どもの頃、このような“思い”をしたことは、案外だれにでもあるのではないでしょうか。だから惹きつけられる・・・

「トウモロコシ畑のにおいは、とてもおいしそうです。昼間はちっともいい匂いだと思わないのに、夜になると、こんなにいいにおいがただよってくるのです。まるで教会にいるような、神秘的な香料のにおいです」
「たいらにのばしたリボンのような道路を、くるくると巻き取っていくように、トラックは全速力で走りつづけました」
こんな文に時々出会えるものだから、はっとして、うれしくなってしまいます。

最近の子どもの本は、内面を深く掘り下げていくものが多いような気がします。そういうのも好きなのですが、
こどもの日常的な(小さな冒険などを通して)喜びや悲しさをまっすぐ描いたこんな、健全で率直なお話もいいなあと思うのです。

最後、幸せと、はちきれそうな満足感で、何度も何度もとんぼ返りするガーネットが好き。
子どもたち、こんな「とんぼ返りしたくなる気持ち」をいっぱい体験してほしいと思います。