『The S.O.U.P. [ザ・スープ]』 川端裕人

――ぼくらは、「ゲド戦記」や「指輪物語」のような物語を作りたかっただけなんだ―― 
帯に書かれたこのことばに衝動買いしてしまった本です。

カバーの裏に書かれたあらすじ。
「世界中を熱狂させたゲーム、「S.O.U.P.」の開発から十年。プログラマから一転、セキュリティを護るハッカーとして、FBIの依頼もこなす巧に、経済産業省から、悪質なHP侵入者を突き止めてほしいという依頼が入る。犯人を追い詰めた巧が見つけたのは、自分たちが開発した「S.O.U.P.」に巣食う、サイバー・テロリスト集団だった!」

インターネットの中だけに生きて、そこに理想郷を築こうとする人々と、現実社会に生きる人々との戦い。
自分の理想にがんじがらめになって、人の生殺与奪さえ、崇高な目的(と自分が信じたこと)のためなら、露ほどにも思わない、カルト。うーっ、気分悪くなる。
その戦いの果てに、思いがけない方向に、双方にとっての風穴と活路を開くことになる。
反面、政治的意図のきな臭い風も招じ入れることになってしまう。
読後、さがしていた青い鳥がうちにいた、みたいな感じもしました。

不慣れなインターネット用語やゲーム用語に戸惑ったが、かなりおもしろかった。反面、読むごとに閉塞感(自分もネットの中に囚われたような気がして)を感じ、つらくなってきた。しかし、やめられない、先が気になって。

イメージとしては、
あちこちに明滅する光の点々だったものが、動き出し、細い光の帯になり暗闇を縦横無尽に走れ始める。
複数の光の帯が交わったり分かれたりしながら、突然思いもかけない方向からきた光と結びついたりする。

ファンタジー
その世界を知らずに言う偏見だということはわかっているが、ゲームの世界と文章で書かれた物語の世界は、似ているようで、全く別質のものだと、わたしは、思う。
本の中の物語が、想像の世界(はっきり“想像”と認識したうえで)で、ある力と知恵をもらって、現実の世界に立ち戻ることができる、想像力を糧にしながら現実の世界でより豊かに生きられるように保証してくれるような気がするのに対して、
コンピュータを介して広がるファンタジーは、どんなにその奥行きが深く広くても、そこに人を閉じ込めよう、取り込もうとしているように感じる。(偏見ですけど・・・)

しかし、インターネットってこわいな。そこがしれないな、と思った。 指輪物語、どうしても読まなくちゃね。
ゲド戦記も全巻読み直したい。