第2次世界大戦下のイギリス。片田舎のリトル・ウィアウォルド村。8歳の疎開児童ウィリアムと、彼を預かることになったトムさんの物語。 実は、このふたりは、ともに心に深い傷を負っている。共に暮らすことにより、癒されていく物語。と簡単に言えばそういうことなのですが・・ 何度も、苦しみながら、ゆっくりと乗り越え、成長していくウィル。 何も聞かず、ただ支え、受け止めるトムさんの静かで大きな愛情。 後半、ウィルを奪回する場面のなんとはらはらしたこと。そして、親友ザック。ああザック! 村の風景の穏やかで優しいこと。 村の人たち、そして、ウィルの友だちがまた、温かく優しい。それぞれに悩みを持ち、夢を持ちながら、互いに支えあっていく。 子どもの本というのに、かなり重たいテーマで、ショッキングな描写(ウィルの母親には怒りよりむしろ哀れさを感じる。そして親友との突然の別れには、間違いだったということになってほしいと心から思った)があるのですが、読後に、ただただ静かな満たされた感動だけを残してくれたのは、 こうした風景の美しさ・のどかさや、温かい田舎の人々の細やかな描写のせいだろうと思う。 >「きみ、死んでもいいくらい幸せだってこと、あると思う? ぼく、いま、それこそ、幸福で破裂しそうな気がしているんだ。 そしてね、いま破裂したら、 ぼくの体や心がこの野原いっぱいに散らかるだろうって」 |