『ラヴジョイの庭』  ルーマ・ゴッデン

焼け跡のロンドンの裏町で、庭を欲しがるなんて、月が欲しいというのと同じくらい途方もないこと。
でもラヴジョイは望み、さまざまな手段を使ってもう少しでこれを手に入れそうになる。
彼女のまわりにいるのは、
いやいや手を貸す…貸さずにはいられない少年。
ラヴジョイを翻弄する身勝手な大人。
自分のことに精一杯で何もしてやれない大人。
夢ばかり見て足元を見失っている芸術家。
自信家。うぬぼれや。
そして、子どもの中に自分の憧れを見出して、黙って見守り続けた暖かい目をしたあの人。


切ない本でした。

始めのほうは退屈で、読むのやめて、図書館に返しちゃおうかと思いました。
大体ラヴジョイという子。
実際こういう子がいたら、「かわいくなーい」と思ってしまいそう…

なのに、後半、ティッシュが手放せませんでした。
これでもかこれでもかと打たれ、
それでも立ち上がろうとする。美しい夢を、小さな夢を、彼女の小さな庭に託して。
彼女なりの正義がそこにある。彼女なりの誠実さも勇気も。

ゴッデンという人の懐の深さ、人間の暖かさを感じます。
地に落とされ、踏まれ、もみくちゃにされた者、
その中に宿る人間としての尊厳、あるいはその種や芽を、
ちゃんと育てる暖かくてよい土…ゴッデンその人のようです。

最後まで読んだ時、シャワーのような日の光を浴びた気がしました。…やっぱりティッシュが必要です。