『深い河―ディープ・リバー』  遠藤周作

インドを旅行するツアー。
それぞれに重いものを背負って、それぞれに何かを求めて、インドへ向かう人々。

彼らは、ガンジス河のほとりで、来し方を振り返り、探していたものを見出そうとする。
何をみつけたのか。
今までみつけてきたものをこれからも見つけ続けるだろうという自分を、この人たちは、さまざまな形で悟らされたような気がする。

河のほとりに佇んだ磯辺が酔いながら、「お前、・・・どこへ行ったのだ」と苦くつぶやく声が、心に残っています。

物語の合間合間に現れる大津という一人の男がリフレインのように繰り返す言葉。
「あの方はヨーロッパの基督教だけでなくヒンズー教のなかにも、仏教のなかにも、生きておられる…」

わたしには、重たくて、難しい話だったが、良いものも悪いものも澄んだものも濁ったものも、すべてを受け入れて流れていくガンジス川と、河と共に生きるインドの人々の厳粛な思いを垣間見せてもらったように思います。
軽い気持ちでインドは語れないような・・・