『のっぽのサラ 』 パトリシア・マクミラン

時代はいつごろだろう。馬車を交通手段にして、木の桶で体を洗うのだから、「大草原の小さな家」の時代(もうちょっとあと?)くらいかな。
新聞に広告を出して妻を求める、という方法に驚いた。
そして、それに答えて海辺の町からやってきたのがサラだった。

見渡す限りの大草原。
貝殻を子どもたち(アンナとケイレブ)におみやげにくれるサラ。
猫のアザラシちゃんを連れてきたサラ。
歌が好きなサラ。
パパのオーバーオールをはいて屋根にのぼるサラ。

いつも海をなつかしがっているサラ…
大草原の絵を描き、海の色が足りないと思うサラ…

子どもたちの「サラにここにいてほしい」という思いはたくさん書かれていたのに、サラの思いはほとんど書かれていなかった。
ただ、このときこうしました、ああ言いました、だけで。
それでもサラの気持ちは痛いほどにわかる。
海はサラにとって「恋しい」という以上のもの、体の半分というような存在なのだろう。

ママを知らないケイレブがサラを求める気持ちが切なくていとしくて。
いちいちサラの言葉尻をとらえて、「~と言った。ここにいるつもりなんだ」とアンナにささやくところ、かわいい。
アンナはお姉さんだから、ケイレブと同じくらいサラを慕っていながら、自分の思いを心の奥に押し込んで静かに見守っているところが けなげで。

嵐の夜に家畜小屋の窓から、大草原の嵐を見ながら、そこに海を見るサラが好き。パパによりそいながら。
サラの寂しさがゆっくりと、もっと静かななつかしさへと替わっていくように思えた。なくしたものをおだやかにとりもどしたような感じ。

「サラはサラなんだ。サラは自分のしたいようにするんだ。わかるかい。」
黄色い麦藁帽子をかぶって馬車で町へ出かけていったサラのことを「なにしにいったの、もどってくるの」とたずねる子どもたちにパパが静かに答える。
こどもたちの素直な不安と同じ不安をパパも持っていたんだね。それでも黙って見送るパパの静かで大きな思い。

海の色を描くための青と緑と灰色の色鉛筆。
海辺の町の花壇に植えていたのと同じキンレンカのたね。
サラが町から持って帰ったもの。
「アンナと、ケイレブと、それからわたしたちみんなに、買ってきたの」

サラは、彼女の海をなつかしがるだけではなく、ここで、この家族とともに新しい海を持とうと思っているのだろう。

パパは、結婚式の日、牧師さんに「サラを妻にするか」と聞かれたら、本当に「あたりきよ」って答えるのかな。