『オタバリの少年探偵たち』   セシル・デイ・ルイス

戦争の焼け跡で、戦争ごっこに夢中だった少年たちが、仲間の危機を救うため、突拍子もない方法でお金を集める。ところが、それが盗まれてしまって…

犯人を追い詰めていく過程は―あとがきにも書かれていましたが、「エーミールと探偵たち」を思い出しました。
でも、敵の本拠地に迫った時、とんでもない事が…

子どもたちが団結して、事にあたる話.おもしろい。
この子どもたちも、それぞれにいろいろなものをしょっている。
時代背景は?第2次世界大戦の直後でしょうか。
この子たちが戦争ごっこをする場所は、「爆弾でどかんとやられたから『どかん場』」という場所。ここで、どかんとやられたときに両親を失った少年が共にいる。
すべてを受け止めたうえで、さばさばとして駆け回る少年たち、でも、それぞれが負っている重荷を心の端できちんと捕らえている。それでいてあっさりとつきあっている仲間がいい。

見せ場は、大きく分けて三つ。
一つ、お金を稼ぐための少年たちの手練手管のおもしろさ。くすっと笑わせてくれる。
次は何かな、と期待してしまうではないの。
二つ、お金が無くなったことに気がついた時の少年たち―謎解き。ここで少年たちの性格の書き分けが際立っている。どの子がいい、と書こうかと思ったけど、どの子もいい。おもしろい。すねた「すもも」さえも。
そして三つ、犯人を追い詰めるところ。
いくつもの山場が用意されている。
特に、
敵の留守宅に忍び込み、敵の秘密を探し回る場面はドキドキする。昔からこういう場面はこわいのだ。いきなり悪いヤツが背後に迫ってきそうで。

登場人物の名前、とうとう最後まで覚えられなかった。名前を見るたび、「えっと、この子はだれだっけ。」でも、その子の行動を読めば何者か、すぐわかる。ああ、あのとき、こういうことを発言した子だ。ああ、あれを持っていた子だ。…それほどに子どもたちがいきいきと書き分けられていた。
最後の少年たちの冒険はドキドキというより、わくわく。少年たちといっしょに楽しませてもらった。
ああ、おもしろかった。
あちこちにたくさんのユーモアがちりばめられていた。あはは、ではなくて、くすくすと笑わせてくれるユーモアが。
最後の校長先生のお説教(と、彼らは思っていたのだ)が始まったとき、
「トピーは、とみればおまじないの指を組んでる。」とかね。
この校長先生の粋なはからいもお見事でした。