『番ねずみのヤカちゃん』  リチャード・ウィルバー

「番ねずみのヤカちゃん」と、次女が言いました。
「わたし、小さい頃、好きだったよねえ。なんであんなに好きだったんだろう。どんな話だったか思い出せない」
図書館から、しばらくぶりに借りてきました。
娘は何度も読み返して、
「そう、どろぼうがね…、でも、ヤカちゃんだってホントはどろぼうじゃない。気づいてないのがおかしい。」
「なんとなく、小さい時とふんいきちがうんだよねえ。どうって言われてもねえ…」
それから、
「ねえ、チーズない? この本読むとチーズが食べたくなる。チーズ食べながら本読みたいなあ」
「ねえ、見て。これ知ってた?」
とびらを開いてみせる娘。一面クリーム色で穴ぼこがいっぱい描かれている。これはチーズの絵だ。その特別大きな穴から、ズボンをはいたネズミが、足と尻尾を出している。
裏返すと、やはり、クリーム色のページの、大きな穴から、ヤカちゃんが顔を出して、どっこいしょと、這い出すところだった。


私が初めてこの本を手にしたのは、もう十年以上前。
図書館の「お話の会」で、素話で、この話を語ってもらったのが始まり。
ヤカちゃんは、声のとても大きなネズミで、そのことからいろいろな事件が始まるのだが、
語り手のSさんは、全体を少し抑えた声で話し、ヤカちゃんのせりふだけ、大きな声で語ってくれた。クライマックスのヤカちゃんの決めぜりふ(?)「それ、ぼくの…」は、ひときわ大きな声で。
おもしろかった。
こういう子いるよね。
天真爛漫で、言わなくてもいいことを言わなくてもいいときに言っちゃう子。本人はけろっとしているけど、その分、周りのもの(読者)が気をつかってしまう。そうして、結果、良いことになっちゃうんだけど、本人は全く気がついていない。このことに自分が関わっていることさえ気がついていない。。そこがおもしろい。

すぐに、この本を借りて、幼稚園児だった長女に読み聞かせました。
Sさんのまねをして、ヤカちゃんのせりふだけ大きな声で読んでみました。
急に大きな声を出した母におどろいて、子どもは、はじめ、きょとんとしていましたが、すましてお話を進める。そのうち、娘はくすくす笑い出し、ヤカちゃんのせりふを心待ちするようになった。

子どもたちは、ふたりとも、この本が大好きでした。


しばらくぶりに、繰り返し本に見入っている次女、
「私はやっぱりこの本が好きだなあ」
ベビーチーズ食べながらの言葉でした。