『真夜中のパーティ』 フィリパ・ピアス

少年少女を中心にした八つの短編。
子どもの心のひだの描写が素晴らしかったです。
たとえば、「牧場のニレの木」の終わり方。
リッキーの窓からずっと見えていた大きなニレの木が倒されて後、
リッキーはあしたのことを考えながらベッドに入る。新しい仲間のことを考えてうれしくなる。
しかし彼は夢の中で涙を流す。なぜ泣いたのか不思議がりながら、また眠りに落ちる。 こういう描写が好きです。

子どもの心はこんなに奥深いんだよ、と言われているような気がしました。作者の子どもに対する敬意のようなものまで感じてしまった。
また、弱い立場の大人(よごれディックや年取ったジム)の秘められたプライドと、それを見逃さずに寄り添う(それもさらっと乾いた感じで)子どもがいいです。

一番好きなのは、「川のおくりもの」
イシガイに対する少年の気持ちの推移が丁寧に描かれています。手の中にあるイシガイに対する思い入れ、すごくよくわかります。夜の川の場面では、自分が主人公になったような気がしてどきどきしました。

表題になった「真夜中のパーティー」も好き。しゃれたユーモア。最後のとうさんの、「(ウィルソンに)菓子を買うものをやったのさ。…あいつはしゃべりすぎるよ」思わず、うふふと笑ってしまいました。