森からの贈り物


地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。(中略)地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで生き生きとしてた精神力をたもちつづけることができるでしょう。
センス・オブ・ワンダーレイチェル・カーソン (佑学社)
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さみしくない本は、もとより本ではないし、さみしくないなら、本など読む必要もない
「おかしな本棚」クラフト・エヴィング商會 (朝日新聞出版)
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「いつ間でも読んでいたい」の意味するところは、「現実に戻りたくない」です。
「おかしな本棚」クラフト・エヴィング商會 (朝日新聞出版)
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七人のおとめが、七本のほうきをもって、半世紀のあいだ、はきつづけても、わたくしの心に巣くう、きえた寺や花や、王たちや淑女たちの巻き毛、詩人のため息、若衆やむすめたちの笑いをふきはらうことはできなかったのです。
この金色のおとめたちは、本の小部屋があれば、きっとそこへちりをはらいにくるのですが、ときには、運がよければ、のちになっても、ちょっとのま、心のあかりをつけにきてくれることがあります。
「ムギと王さま」(作者まえがき)より エリナー・ファージョン(岩波書店
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本は、本であって、本ではない。
誰もそう言わないが、本は、
あるときは歳月であり、記憶であり、
遺失物であり、約束であり、
読まれずじまいになった言葉が、
そのままずっと、そこにある場所であり、
それは、日々の重荷のように、
重い家具として、ここにあって、
人生と同じだ。
「蔵書を整理する」~詩集「世界はうつくしいと」より 長田弘みすず書房
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児童文学の本には真実がある。ほんものの価値あるものが、いっぱい詰まっている。
―中川季枝子―「なつかしい本の記憶――岩波少年文庫の50年」より
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読書はすてきだった。読書はすばらしかった。本を読んでいれば寂しさとは無縁でいられた。
寒けも恐れも感じられず、いつも誰かがそばにいるように感じられた。
「ストリート・キッズ」ドン・ウィンズドロウ(創元推理文庫
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今振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。
何よりも、それは私に楽しみを与えてくれました。 そして、その後に来る、青年期の読書のための基礎を作ってくれました。
それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。 この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました。
「橋をかける」美智子 (すえもりブックス)
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若い頃に影響を受けた本として、一冊をあげることはできないですね。本って一冊の影響は受けないものです。
本を読み続ける習慣が身に付くと、人生って本当に変わるんですけど、一冊読んで魔法のように変わる本はないです。
石田衣良―「本棚」(ヒヨコ舎編)より
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・・・なんといおうと、本に書いてあるひみつはもうあたしのものだ。あたしからうばおうとしてもそうはいかない。
「家なき鳥」グロリア・ウィーラン(白水社
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肉体を作るのは、食べたものだけじゃないのだ。見たもの聞いたもの、出会った人、みんな血や肉になる。そうやって、知らないうちにどんどん自分が構成されていくというのは、ちょっと怖いけれどおもしろい。
そういう意味では本も例外ではなく、くり返し読んだものやインパクトの強かったもの、あるいはそのどちらでもないのに何かのはずみで、という本が、たぶんいつの間にか血となり肉となっている。
「絵本を抱えて部屋のすみへ」絵國香織 (新潮文庫
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この世の中にはすでに星の数ほども本があり、この先も浜の真砂ほど本が出ることでしょう。
いったいそのうちの何冊を生きているうちに手にとることができるだろう、そう思うとじっとしていられなくなり、立ち上がって走り出したくなる気分です。
それでいながら古い本をひっぱり出してきて、二度三度と読み返すなどと能率の悪いことをやりたくなるのも、また人の常というもの。
古い友人に会いに行くように、ときどき手に取ってページをめくらずにはいられない、そんな本が誰にでもきっと何冊かあるでしょう。
「大人にも子供にもおもしろい本」向井元子 (中公文庫)
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幼少時代に本物に接するということはかけがえのない人生経験で、大人になってから見るよりも、はるかに直感的で純粋な印象を与えられる。
「絵本のよろこび」松井直 (日本放送教会出版局
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この図書館は守られるべき本を集めたところなんだよ。いつか、そのときが来たら、ここは千年の旅が始まる場所となる。
いつか人々がこの図書館の本を読み、ここからそれぞれの旅を始めて、
千フィートの高みで宙返りし、側転し、歌い、おどけ、ダンスをすることになる。
[マディガンのファンタジア」マーガレット・マーヒー(岩波書店
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「五十歳になっても子どもの時と同じく(もしくはそれ以上に)価値のあるものでなければ、十歳の時だって読む価値はない」
「別世界にて」C・S・ルイス 中村妙子訳 (みすず書房
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狭い螺旋階段を昇ると居間があり、どの壁も天井まで本でいっぱいの棚になっていて図書館みたいだった。
何百冊あるかわからないけど、すべて革張りで深紅や紺の表紙、金箔の背の文字―― 気が遠くなりそうなほど美しい本棚だった。
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子平凡社
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新刊本の書店は清潔で、コンピューター管理されていて、本はきちんとアルファベット順にならべてあるのが望ましい。
だが古本屋はあまり整っておらず、猫が昼寝していたりするほうがよい。
そして、ひょっとするとポーの『タマレーン』を見つけた猟師のような幸運にめぐまれるかもしれない、と空想する余地があるくらい雑然としていてほしい。
「本の喜び書棚の悩み」アン・ファディマン(草思社
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どれほど時間が空こうと、本はちゃんと待っていてくれています。年齢を重ねた自分に、必ずまた新たな魅力を見せてくれます。本は、人間よりもずっと我慢強い存在です。
「心と響き合う読書案内」小川洋子(PHP新書)
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そう、本は人を呼ぶのだ。
「この本が、世界に存在することに」角田光代メディアファクトリー
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本は友だちになってくれるのよ。
さびしいとき、私はあの大きな本棚のところまで、こう、いすをすべらせて行って、手をのばすの。そして、何でも手にふれたのを取り上げて読むのよ。何冊かは、あまりに知りつくしているから、本のほうでも私を知っているにちがいないと思うくらいだわ。
私たちは、いっしょにお茶を飲むのよ。――ボヴァリー夫人とわたしとでね。ロビンソン・クルーソーと、お茶を飲んだこともあるわ
「クレイジー・レディ!」J・L・コンリー(福音館)